2018年の補助金はどうなる? H29補正予算・H30当初予算
補助金公募情報(リンク集)(7/2)
個別案件情報の公募情報の更新は煩瑣なため削除し、主要な情報源をリンク集としてまとめました。
1週間に一度くらい、巡回チェックするのがよいでしょう。
ちなみに、公募情報も採択情報も、「金曜日の夕方」に公表されることが多いようです。
15時~の打ち合わせ前にチェックしたときには未公表、それから2時間打ち合わせをして、
終わってから念のためチェックしたら公表されていた、ということもありました。
1週間に一度のチェックは、いつ行ったらいいのか?あえて挙げるなら「土曜の朝」かもしれません。
中小企業庁「補助事業公募一覧」
中小企業庁WEBサイトのトップページのバナーまたは右側のサイドメニューをクリックしてアクセスします。
下の画像をクリックすると、当該ページにジャンプします。
省エネ関係補助金(一般社団法人環境共創イニシアティブ)
経済産業省・環境省の省エネルギー関係補助金の事務局となります。
下の画像をクリックすると、当該ページにジャンプします。
農林水産省
各局別に補助金メニューが掲載されています。
ということは、各局が何を担当しているかが予め分かっていないと、
自分がやりたいことにマッチする補助金がどこにあるか分からないわけです。
また、林野庁(林業関係)、水産庁(水産関係)は、ここからさらにリンクをたどることになります。
下の画像をクリックすると、当該ページにジャンプします。
国土交通省(住宅・建築関係)
国土交通省WEBサイトには補助金公募一覧といった案内ページがありません。
住宅・建築関係の補助金は、こちらで探すことができます。
東京都(東京都中小企業振興公社)
東京都の主要な補助金の一覧と公募情報のページです。
東京都の場合、新規事業や設備投資等に対する補助金についても、基本的に「助成金」という名称が使われています。
下の画像をクリックすると、当該ページにジャンプします。
また、目的別にどんな補助金が用意されているかを知りたい場合は、こちらの体系図、
各補助金メニューの概要・公募スケジュール・問い合わせ先等を網羅的に知りたい場合は、こちらの一覧表を、
参照するとよいでしょう。
東京都(振興公社以外)
東京都では、上記以外でも補助金公募が行われています。
都道府県で唯一、地方交付税の交付を受けていないだけあって、独自財源を使った補助金メニューが豊富です。
- 環境・省エネ系→クール・ネット東京(東京都地球温暖化推進活動センター)
- 観光系→TCVB公益財団法人東京観光財団
- 雇用関係→公益財団法人東京しごと財団
29年度補正予算成立(2/2更新)
1月22日に審議入りしていた平成29年度補正予算が、政府案通り、2月1日可決成立しました。
今後、公募情報がどんどん出てきます。
そもそも補助金とは?
補助金の効果
目先の具体的な話の前に、少しだけ、原理原則のおさらいをしておきます。
企業がビジネスを発展させるには投資が必要です。会社の設立自体が投資ですし、人を採用するのも、機械装置を購入したり店舗の工事をしたりするのも投資です。
この投資で、すぐに売り上げが上がって利益が確保でき、短期間で回収できるなら迷うことはありません。しかし、たしかに必要なことは間違いないが、回収まで時間がかかる投資だとしたら、どうでしょう?躊躇しますね。
では、その投資が、たとえば半分で済むとしたら、経営者の考えは変わるでしょうか?たとえば、投資回収に5年かかるところ、投資額が半分になれば、回収期間も半分の2.5年になります。一般的に投資回収3年がGO/NOGOの判断基準になりますから、こうなるならGO!の意思決定に傾きます。
補助金の効果は、このように投資回収期間を短縮することで、経営者の投資判断を後押しすることにあるといえます。
補助金の原資
補助金の原資は税金です。税金を私企業に投入する(企業側からみると「お金がもらえる」)のはなぜかといえば、 その結果、需要が顕在化する(つまり、発注がかかる)ので、世の中にお金が回るようになり、そこからの波及効果が期待されます。
最終的には、消費税、法人税、所得税、固定資産税などの税収増につながることで、財政的にも帳尻があうことが期待される、という話です。
国の補助金は国税、地方公共団体の補助金は地方税が原資なので、それぞれ、滞納があると補助金は受けられません。原資を出していないわけですから。つまり、補助金というのは善良な納税者の、政府による分配を通した互助会のようなものと考えられます。
みんなが額に汗して納めた税金は公金となるので、その使途については厳しいチェックが必要ですね。補助金に関しては、補助金適正化法という法律で補助金が正しく使われるよう規制し、不正使用に対しては最大5年の懲役などの直罰規定が用意されているのです。
いつも言うのですが、「今、あなたの頭の中に浮かんだような不正の手口は、他にもたくさんの人が考えるし、考えただけでなく実行してお縄を頂戴した奇特な先輩が多数いますから、今さら、あなたが自分で確かめる必要はないと思いますよ」。
補助金はあなたへの投資
補助金は融資と違って「返さなくていい、もらえるお金」と言われます。それはその通りなのですが、国や地方公共団体はサンタクロースではありません。すでにご説明した通り、もらったお金を返す必要はないですが、将来の納税という形で原資を増やすことに貢献することが期待されています。
将来の納税が増えるということは、とりもなおさず、補助を受けた事業が成功して取引が拡大し、雇用や給与を増やすことができたからです。事業の成功が、企業の投資の目的ですし、その投資を後押しする投資(すなわち補助金)の目的でもあるのです。
ですから、投入した補助金が無駄にならないように、ムリな計画でないか、ちゃんと納税が増える見込みがあるか、などを申請書にもとづいて審査します。創業や新規事業進出の際に融資を申し込めば、事業計画を提出して審査を受けることになりますが、それと同じです。
29年度補正予算の目玉補助金
2017年12月22日に、平成30年度政府予算案が閣議決定されました。そのうち中小企業関係の箇所から、めぼしい補助金をピックアップしてみました。ちなみに30年度補正予算にはめぼしい補助金が見当たりません。その理由は後述します。
ものづくり補助金
平成24(2012)年度から始まった、補助率2/3という高補助率で「革新的なものづくり・サービス開発のための設備投資等を支援する」補助金です。
下記に事業名を並べましたが、「ものづくり」という言葉は共通ですが、その前後の言葉が微妙に変化しています。
補助事業の対象や要件、金額も、毎年、少しずつ変わってきていますね。「去年はこうだったから」は、おおむね当てはまりますが、まるまる当てはまるということもありません。
- 平成24年度補正「ものづくり中小企業・小規模事業者試作開発等支援補助金」
- 平成25年度補正「中小企業・小規模事業者ものづくり・商業・サービス革新事業」
- 平成26年度補正「ものづくり・商業・サービス革新補助金」
- 平成27年度補正「ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金」
- 平成28年度補正「革新的ものづくり・商業・サービス開発支援補助金」
- 平成29年度補正「ものづくり・商業・サービス経営力向上支援事業」(予算案)
28年度補正では、補助額上限最大3000万円でしたが、29年度補正ではどうなるか、これは公募要領が出てからの話になりますので(ほかの補助金も同様)、挑戦してみようという方は、今(2017年末)、計画に着手すべきです。
ちなみに予算は総額1000億円、2017年11月16日の安倍総理大臣の発言によれば
年末に向けて編成する補正予算では、いわゆるものづくり補助金を盛り込み、1万を超える皆さんの攻めの投資を支援してまいります
ということなので、単純計算すると、1000億円÷10000社=1000万円/社と想定されますね。
※2018/1/10追加
IT導入補助金
平成28(2016)年度から始まった、「バックオフィス業務の効率化等に資する IT ツールの導入を支援する」補助金です。補助率は2/3。
- 平成28年度補正「サービス等生産性向上 IT 導入支援事業 」
- 平成29年度補正「サービス等生産性向上 IT 導入支援事業 」(予算案)
予算総額は500億円で、28年度補正では補助金額上限100万円だったので、単純計算すると、500億円÷100万円/社=50000社の枠があるということなので、大幅増です。
※2018/1/10追記:本稿作成後、12月25日に公表された経済産業省H29補正予算PR資料では、「補助額:15万円~50万円、補助率:1/2」とされています。
28年度補正では当初応募が少なかったのですが、追加募集では逆に応募が多すぎて採択率が下がりました。ニーズがあるということで、大幅増額になったと思われます。
補助金の申請は、通常、設備等を導入しようとする事業者が自ら行うのですが、この補助金に限っては、ITツールを提供する事業者(販売者)が代行することになっているという点が特色です。導入事業者は楽ですが、販売者(IT導入支援事業者)は大変です。
申請方式や申請書の書式などについて、改善・改良が図られる可能性があると思われますが、詳しい内容は公募要領が出てから、ということになります。
※2018/1/10追加
小規模事業者補助金
平成25(2013)年度から始まった、「小規模事業者が商工会・商工会議所と策定した経営計画に基づいて行う販路開拓の取組等を支援する」補助金で、HP作成・商品カタログ作成・商品パッケージリニューアル・展示会出展等の、直接的な顧客獲得に結び付く取組が補助対象となります。
- 平成25年度補正「小規模事業者持続化補助金」
- 平成26年度補正「小規模事業者持続化補助金」
- 平成27年度補正「小規模事業者持続化補助金」
- 平成28年度補正「小規模事業者持続化補助金」
- 平成29年度補正「小規模事業者支援パッケージ事業」(予算案)
この補助金の背景には、平成26(2014)年の「小規模企業振興基本法及」び「商工会及び商工会議所による小規模事業者の支援に関する法律の一部を改正する法律(小規模支援法)」があります。
中小企業基本法があるのに、その中でもわざわざ「小」だけに絞った基本法を成立させたということは、相当の長期的視野にもとづいて、恒久的に小規模企業を支援する必要があるという政策判断がなされた(つまり、政権交代があってもなくても継続する)、と考えられます。小規模事業者の定義は以下のとおり。
- 製造業その他:従業員20人以下
- 商業(卸売業・小売業)・サービス業:従業員 5人以下
ちなみに、日本の企業体の93%(15社中14社)が20人以下ですから、大半の事業者が対象になります。
予算総額は120億円で、従来どおり1社あたり補助金額上限50万円とすると、単純計算すると、120億円÷50万円/社=24000社の枠があるということになります。
ものづくり補助金の項で触れた2017年11月16日の安倍総理大臣の発言でも、
商工会の皆さんと一緒に進めている持続化補助金も更に活用しながら、小規模事業者の生産性向上にも全力を尽くします。
ということだったので、それを予算で表現したらこうなった、ということですね。
※2018/1/10追加
30年度予算は?
補助金の弊害が指摘
では、30年度の本予算(当初予算)はどうでしょうか。2017年12月22日に閣議決定された予算案をみればよい、ということこなのですが、なぜそういう予算になっているのか、の背景を知る必要があります。
ほとんどの人が見たことも聞いたこともないと思いますが、財政制度審議会が毎年度、予算編成に関する建議というのを出しています。最新版は、2017年11月29日付「平成30年度予算の編成等に関する建議」です。ここに予算編成の事実上の方針が書き込まれているわけです。
この建議の中小企業の項に、次のように記載されています。
中小企業向けの補助金については、近年、高い補助率のものが多くなっているが、こうした高率の補助金については、以下のような弊害も懸念される。
・ 事業コストを大幅に引き下げるため、モラルハザードが生じ、効率的な投資等に向けた適切な経営判断が妨げられる。
・ 補助金の獲得自体が目的化し、事業活動における補助金依存度が高まる。
・ 適正な市場競争を歪め、生産性の低い企業の退出を妨げるなど、新陳代謝を阻害する。
なかなか、強烈です。
本記事の冒頭で「補助金の効果」「補助金はあなたへの投資」と書きましたが、本来想定していた効果が得られず、投資回収できない、ということですね。
補助金のあり方は大きく見直し
では、これからはどうなるのか?引き続き、「建議」の記述をみてみましょう。
- 中小企業向けの補助金については、・・・公平・公正な競争環境の確保やモラルハザードの防止の観点から不断の見直しを行うとともに、中小企業セクター全体への波及効果が大きく、生産性向上につながるような分野・対象(オープンイノベーションによる研究開発等)に重点化していくべきである。
- 事業の効率性が高まるよう、補助率のメリハリ付け等の効果的な対応を講じていく必要がある。
- 中規模企業と小規模企業では財務基盤に違いがあることや、小規模企業については、「小規模企業振興基本法」において事業の持続的発展が旨とされていることを踏まえ、補助の在り方を含めて、両者に対する支援の枠組みを再構築していくことも重要である。
つまり、補助の対象は設備投資から研究開発にシフトし、小規模企業向けに、より高い補助率を用意する、ということになるのでしょう。
補助金はなくなりはしませんが、29年度補正予算までと、以後とでは、大きく様相が異なってくるというのが私の予想です。
代わりに重視すべきは?
補助金依存を脱するといのは、政策的にだけでなく、企業経営自体においても当然必要なことではありますが、「先立つものが必要」ということに変わりはありません。
これに対して、補助金で財政出動はしない代わりに、経営力強化の自助努力を金融支援していくというのが「建議」の方向性です。
- 今後の中小企業支援策は、市場競争を前提に、独立した中小企業者の自主的な努力の助長を旨とする「中小企業基本法」の原点に立ち返り、経営力強化に向けた自律的な取組を促していくことが適当である。
- 中小企業の手元資金の改善状況や信用補完制度の見直しの趣旨もあわせ考えれば、中小企業の資金需要に対する補助金等の財政資金の必要性は低下してきており、新たな信用補完制度の下で民間資金の活用により対応していくことを基本とすべきである。
キーワードは、経営力強化と新たな信用補完制度です。
中小企業等経営強化法
このキーワードは、何を意味するのでしょうか?
中小企業施策を読み込んでいる方なら、すぐにピンとくるはずです。
中小企業等経営強化法による支援が前面に出てくるということで、具体的にいえば「経営力向上計画」と「中小企業経営強化税制」です。
ちなみに、経営革新等支援機関の認定制度も、同法にもとづくものです。
これらについては、稿をあらためて解説したいと思います。
まとめ
中小企業への補助金の潮目は、大きく変わりました。とくに、設備投資に対する大型補助金は今後期待薄と考えられます。29年度補正の「ものづくり補助金」は競争も激しくなると予想されますので、早めの準備と認定支援機関へのご相談を!
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