29年度補正ものづくり補助金 公募要領等解説~11/5更新~
この記事の目次
一次公募採択結果公表(10/29)
二次公募採択結果が公表されました。
全国で6,355者の応募に対し、2,471者の採択なので、採択率は38.9%となります。
一次公募に対し、応募者は17,275者→6,355者へと約1/3、採択者数は9,518者→2,471者へと約1/4となり、採択率は55.1%→38.9%へと大きく低下しました。
といっても、これで例年並みの採択率なので、とりわけ低いというわけではありません。
納期が厳しい設定なので、採択者には早く交付決定通知が発行され、発注・事業着手できることを願います。
採択者リストはこちらです。
二次公募開始(8/5)
8月3日から、二次公募が開始されました。
締切は9月10日(月)当日消印有効、電子申請の場合は翌11日(火)15時まで、実質5週間の公募期間となっています。
一次公募採択結果公表から1ヶ月あまり、通例よりもだいぶ長く待つこととなりました。
事業実施期間は、交付決定日から平成31年1月31日(木)まで、
採択公表は10月中を目途、となっています。
となると、交付決定日は11月になるでしょうから、そこから発注をかけて、
年末年始をはさんで、2ヶ月ほどで設置・納入完了する必要があります。
機械設備で、カスタマイズが必要だったり、一品もの受注生産だったりする場合は、
納期が間に合うかどうか、申請前にメーカーによく確認しておくことが必要です。
一次公募不採択、でも再チャレンジしたい!なら
不採択の理由は非公開なので、自己評価するしかないのですが、
「要件を満たしているものの、加点評価が十分に得られなかった」
とお考えの申請者は、どのように加点評価を得るかを中心に、申請書の熟度を上げることで、復活当選を狙う作戦となります。
5週間という準備期間は、ちょうどよいでしょう。
一方、「要件を満たしていないために、不採択になった」
と思われる場合は、根本的に申請書を練り直す必要があります。
ただ、吟味した結果、要件を満たせない場合は、もの補助は断念して、
経営力向上計画・先端設備等導入計画による法人税・固定資産税の減免措置活用に切り替え、
早く実行したほうがよいでしょう。
一次は間に合わなかった、でもラストチャレンジしたい!なら
元々、一次公募に申請しようとしていたけど、仕様の詰めが間に合わなかったとか、
申請書にかける時間を確保できなかった、などの理由で断念した、という場合は、
ある程度、プランを練っていたわけなので、それが文章・数字・図表等の
素材として残っていれば、5週間という公募期間で、
残っていた詰めの作業と申請書の仕上げを急ぐことになります。
十分、間に合わせることは可能でしょう。
一次公募で考えてはいたけど、文章・数字・図表等の素材にはなっていない、
あるいは、今回の二次公募をみて、あ、それならチャレンジしようかな、と、
実質今からスタートの方は、ちょっと厳しいかもしれません。
夏休みやお盆休みで、集中的に何日かこれだけに専念するよ、
機械設備の見積取得や納期も問題ないよ、という場合は、
一念発起して、がんばってみてもよいでしょう。
要件を満たすかどうかがわからない!なら
まず、本稿の下のほうの内容(3/22付け)をお読みください。
自己判断がつくならそれでよし、つかない、あるいは、自信がないという場合は、
採択実績のある支援事業者にご相談ください。
筆者へのお問い合わせはコチラからどうぞ。
一次公募採択結果公表(6/30)
一次公募採択結果が公表されました。
全国で17,112件(17,275者)の応募に対し、9,443件(9,518者)の採択なので、採択率は55.2%(55.1%)となります。
過去の公募での採択率が30-40%台であったのに比べて、かなり高い採択率となっています。
採択者リストはこちらです。
1件当たり平均の採択額がどのくらいかわかりませんが、上限の1000万円と仮定すると採択額合計は944億円。半分の500万円と仮定すると採択額合計は472億円。
全社が上限額で採択とは思えませんから、予算1,000億円に対し、相当程度が残っていると推測されます。
一次公募で不採択だった会社はぜひとも再チャレンジしたほうがいいですし、タイミングとか準備不足で間に合わず断念した会社も、ここはチャンスです。初志貫徹しましょう。
通常、一次公募の採択結果公表と同時に二次募集の公募も開始されるですが、今回は、まだです。
公募期間がどのくらい用意されているかによって、予算の消化具合もある程度推測可能です。
週明け(というか月明け)の7月2日(月)、注目です。
電子申請について(4/28改訂)
郵送での提出期限4/27が過ぎましたが、電子申請は5/1火15時まで可能です。
- 中小企業庁運営のミラサポというサイトの会員登録
- 電子申請システムのユーザー登録(1とは違うID・PW)
の2段階で電子申請が可能となります。。
手続きの詳細は、ミラサポの記事を参照してください。。
申請書の提出準備について
まもなく一次公募の申請期限(4/27)
一次公募の公募期間は、「 平成30年2月28日(水)~4月27日(金)〔当日消印有効〕」です。
提出方法は、
- 中小企業庁が開設した支援ポータルサイト「ミラサポ(https://www.mirasapo.jp/)」での電子申請
- 補助事業の実施場所に所在する地域事務局への郵送
のいずれかです。
ミラサポでの電子申請は、4月中旬~5月1日(火)15時まで、となっていて、郵送での提出に比べて、
4月27日の夜~5月1日の15時まで4日近く準備期間を長く確保できます。
が、そうはいっても28・29・30と3連休の休日ですから、その間は認定支援機関の確認書や、発注先の見積書、登記簿謄本などを入手しようとしても難しいでしょう。
公募要領(p.16)に、
電子申請を利用される方については、採択決定後、速やかに原本を提出してください。
とあります。ミラサポの電子申請画面はまだ公開されていませんが、こう書いてあるということは、原本の提出は申請時は不要とすることが予定されているのでしょう。
具体的には、
採択された場合、PDFファイルを1部印刷し、押印して他の添付資料と併せて地域事務局に郵送してください。
ということになります。。
提出準備は余裕をもって期限の2日前までに
提出書類は、下記のとおりで、①~⑥は、正本1部、副本5部、合計6部、⑦は各1部、⑧は1部の提出が必要です。
① ものづくり・商業・サービス経営力向上支援補助金事業計画書 一式【様式1・2】
② 認定支援機関確認書
③ 決算書(直近2年間の貸借対照表、損益計算書、個別注記表)
④ 定款若しくは登記事項証明書(提出日より、過去3ヵ月以内に発行されたもの)
⑤ 会社案内等事業概要の確認ができるパンフレット、労働者名簿一覧等
⑥ 「3~5年計画で「付加価値額」年率3%及び「経常利益」年率1%の向上を達成する計画書」※
※【様式2】2.(4)会社全体の事業計画の算出根拠等の詳細を別紙として記載する方のみ
⑦入手価格の妥当性を証明できる書類※
※「機械装置費」を補助対象経費に計上される方
⑧ 提出書類チェックシート
綴じ方に細かな指定があるので、公募要領をよく読んで、モレ・ヌケのないように慎重に準備する必要があります。
下記の書類については、CD-Rでの提出も必要です。
ファイル名・形式等について、こちらも細かな指定があります。
【様式1】計画書の提出について((株)〇〇) Wordまたは一太郎
【様式2】事業計画書((株)〇〇) Wordまたは一太郎
・認定支援機関確認書((株)〇〇) PDF
・見積書((株)〇〇):参照させる場合のみ PDF
・労働者名簿一覧((株)〇〇):該当する場合のみ PDF
単に、紙を束ねて綴じるだけ、ファイルを保存するだけではありますが、
- 作業時間として2-3時間はみておくこと
- 提出期限当日ではなく、2日前まで(4/25まで)に提出準備を終えること
- 複数人で確認しながら作業を進めること
をお勧めしています。
郵送の期限当日の4/27や、電子申請の期限当日の5/1にバタバタ作業して、余裕がないために見落としや不備が生じたり、最後の最後になって必要書類がないことに気づいても、もうどうにも手を打ちようがないからです。
また、1人で作業してうっかりミスがあったら、責任重大です。
前日でなく2日前というのは、一晩寝かせてみて、翌朝起きてみたら、もうちょっと、ここをこうしようと気づくこともあるので、その手直しができるように、という意味も含めています。
せっかく労力をかけて作成した申請書なので、念には念を入れて(念も込めて)、提出しましょう!
先端設備等導入計画について(3/31)(4/10加除)(4/14更新)
固定資産税が3年間最大ゼロになるお得な制度
ものづくり補助金申請の加点項目の1つに、「先端設備等導入計画」があります。
一般型の場合には、補助率が1/2→2/3にアップする条件でもあります。
この計画の認定を受けると、固定資産税が3年間、最大ゼロになる税制優遇を活用できるので、ものづくり補助金に申請するしないにかかわらず、設備投資を計画しているなら必ず認定を受けておきたい新規施策です。
公募要領p.2-3(下線は引用者)
生産性向上特別措置法(案)(平成30年通常国会提出)に基づく、先端設備等導入計画による加点及び一般型における補助率2/3を適用する場合は、応募申請する事業者の補助事業を行う事業所が所在する自治体が固定資産税の特例率をゼロとすることを公表しており、かつ、事業者も今後自身の先端設備導入計画の認定申請を自治体に行い、認定を受ける意志があることを応募申請時に表明した場合に限ります。
加点または補助率アップを受けるには
で、ものづくり補助金において、加点または補助率アップを受けるには、申請書に、この計画の認定を受ける意思があることを表明する必要があります。
これは、チェック(✔)を1つ入れるだけですから、意思の表明自体は簡単です。
加点の場合はこちら。
補助率アップの場合はこちら。
自治体の動向や、いかに?
ただ、自社でコントロールできない条件があります。それが、補助事業を実施する事業所の自治体の対応です。
公募要領p.3(下線は引用者)
これらを表明して採択された場合、自治体の固定資産税ゼロが条例成立等により措置され、事業者が自治体から計画認定を受けた後に交付決定をしますので、それまでは設備の購入申込をはじめ、補助事業に着手できないことをご留意ください。
つまり、申請書でチェックを入れたが最後、自治体の議会等の状況により、条例が成立しなかったり成立が遅れたりしても、補助事業に着手できないのです。
それ以前に、生産性向上特別措置法(案)自体、2月9日に衆議院に提出されたものの、まだ審議も行われていないのです。
そこで、ともかく自治体の意向だけは国が確認しますよ、ということで、自治体アンケートを行い、その結果を3月中に中小企業庁HPで公表し、各地域事務局の公募HPにもリンクを貼るということになっていました。
公募要領p.3(下線は引用者)
現在、自治体に特例措置への対応に関するアンケートを実施しており、その結果を3月中に中小企業庁HPにて公表する予定です(公表後、各地域事務局の公募HPにもリンク先を掲載する予定です。)ので、そちらをご確認してください。なお、中小企業庁HPに記載がない場合は、自治体独自で公表している場合がありますので、自治体にお問い合わせください。
3月中には間に合いませんでしたが、4月3日、ようやく、市区町村のアンケート結果が公表されました。
- 生産性向上特別措置法案における基本計画策定等に係るアンケート調査の結果(一次公表)(平成30年4月3日)
- 生産性向上特別措置法案における基本計画策定等に係るアンケート調査の結果(二次公表・最終)(平成30年4月13日)
この資料の前書きに、
ものづくり・商業・サービス経営力向上支援補助金(ものづくり補助金)については、「1.基本計画策定の意向について」の回答が「ア」、かつ、「2.固定資産税の課税標準の特例率について」の回答
が「ア」又は「ウ」の各市区町村は優先採択の対象とする予定です。
と書いてあります。自社の申請書の命運が、各市区町村の意向に部分的にでも影響されてしまうことが確定しました。
ちなみに、「1.基本計画策定の意向について」の回答が「ア」というのは、「ア:臨時措置法の施行にあわせ、速やかに策定する予定である」。
「2.固定資産税の課税標準の特例率について」の回答が「ア」又は「ウ」というのは、「ア:ゼロとする意向」又は「ウ:分野や業種等により、ア及びイを併用」。
すると、「イ」は何だということになりますが、「イ:ゼロを超え1/2以下の間とする意向」。
要するに、一部でも固定資産税ゼロの特例率にする市区町村の事業者からの申請が優先採択の対象となる、ということですね。
申請者にできるのは、アンケート調査結果の表から自社の所在市町村の回答を探し出し、チェックすることです。
- ア・ア
- ア・ウ
だったら、一安心です。
ただし、4月13日の2次公表分で「最終」とのことですが、あくまで「市区町村(長)」の意向であって、この先、つつがなく「導入基本計画」が策定され、議会で条例が制定されるかどうか、引き続きウォッチしていく必要があります。
ただし、4月13日に二次公表が予定されており、「一次公表の内容が二次公表で修正される可能性もありますので、ご注意ください。」とのことです。
どう注意したらよいのかわかりませんが、しかし、本日3月31日現在、いずれも確認できません。したがって、この加点または補助率アップが受けられる可能性があるかどうかを知るには、現時点では自治体に問い合わせるしか方法がありません。いくらなんでも申請期限の4月27日までには公表されると思いますが、この加点または補助率アップのチェックボックスに✔を入れるのは、ギリギリまで待ったほうがよさそうです。当然、申請書を提出するタイミングも、その後ということになりますね。また、この点に関していくら気をもんだとしても、自力で状況をコントロールすることはできないので、申請書の内容を充実させるほうに集中しましょう!
ものづくり補助金が求めているものとは?(3/22)
不採択にならないために
ものづくり補助金は、補助額も大きく、予算総額も大きいので、多くの中小事業者に門戸が開かれている補助金です。
ただし、この補助金が求めているのは何か、実はとてもわかりにくいので、多くの申請者が、「これでいいのかな?」と迷いながら申請書を書いているのではないでしょうか?
結果、採択されれば、「これでよかった」ということになるので、それ以上深く振り返りをすることもなく、事業に着手していくでしょう。
しかし、不採択の場合には「どこがだめだったのか」「なぜ採択されなかったのか」と、(不満・憤懣を伴った)疑問が生じます。ところが不採択の理由は開示されません。
そのため、「なんで~~~?」という不満・憤懣・疑問は解消されないまま、不採択となった事業者に残り続けます。
これは、入学試験において合否の結果は通知されるものの、点数が開示されたり、不合格の理由が開示されないのと同じですね。ただ、不合格の理由は単純に「点数が足りなかった」ことに尽きます。
補助金の場合、不採択となるのは、「補助対象者に該当しない」「補助対象事業に該当しない」「書類に不備・不足があった」という審査以前の理由と、審査の結果「点数が足りなかった」という理由になります。
「補助対象者に該当しない」「補助対象事業に該当しない」「書類に不備・不足があった」というのは、公募要領をよく確認すれば避けられることです。分からなければ、事務局に問い合わせればよい話です。
ただし、ものづくり補助金の場合、「補助対象事業に該当しない」のケースが相当数あるのではないかと推測しています。
なぜならば、不採択になった事業者から話を聞いたり、申請書を見せていただいたりした場合、ほとんどが、「補助対象事業に該当しない」と思われるからです。
そうした方は異口同音に「こんなに画期的なビジネスモデルなのに、なぜ落ちるのか?」と言われますし、詳しく伺ってみると確かになるほどと同意できるのですが、それでも公募要領に照らして合わせて「補助対象事業に該当しない」のであれば、審査をする側にしても、点数の付けようがありません。
どんなに一所懸命書かれた答案でも、聞かれた問題に答えていなければ採点できないので零点になってしまうのと同じなのです。
そこで、ここではそういう残念なことにならないための公募要領の読み解きをしていきます。
ただし、ここでお伝えする内容は、あくまで、公募要領(必要に応じて、その他公的機関の関連文書)の文言・表現に対する筆者個人の見解であって、中小企業庁や事務局の見解ではないことにご留意ください。
また、別の専門家に聞けば違う意見もあるでしょう。参考にされるかどうか、また、参考にされた結果については当方では責任を持てませんので、この点あらかじめご了解の上で、お読みください。
公募要領「表2審査項目(2)技術面」を読み解こう
補助金のご相談でいちばん多い質問が「○○をやろうと計画しているんですが、対象になりますか?」です。
H29補正ものづくり補助金の場合、この質問に答えるには、具体的に
- 対象類型:ものづくり技術なのか、革新的サービスなのか
- 事業類型:企業間データ活用型なのか、一般型なのか、小規模型なのか
- 補助対象経費:機械装置費等、事業類型ごとに示されている費目に該当するか
といったことを判断していくことになります。
しかしそれ以前に、そもそも本質的に、その○○が満たすべき要件というのが、公募要領の表2審査項目、その中でも(2)技術面の各項目において定義されています。
ここに示されている項目ごとに申請書の内容を評価して点数付けをしていくわけですから、公募要領の中で最重要といってもいい部分です。この表2をよく吟味している申請者がどれだけいるか、常々疑問に思っているところです。
必ずクリアしなければならない項目
それでは、審査項目(2)技術面について、具体的に読み解いていきましょう(以下、ページ番号は全国事務局HPに掲載されている(参考)公募要領のページ数を示します)。
【審査項目】p.27
①新製品・新技術・新サービス(既存技術の転用や隠れた価値の発掘(設計・デザイン、アイデアの活用等を含む))の革新的な開発となっているか。
申請者がやりたい○○が、この定義に合致する革新的な開発となって「いない」と評価されてしまったら、他の記載内容がどんなに素晴らしくても、採択されることはあり得ません。
ゼロにどんな数字をかけても、計算結果はゼロですね。これが、不採択のうち、「補助対象事業に該当しない」のパターンです。
しかしそれにしても、これ、とても分かりにくい日本語ですね。
そこで読み解きのために記号化して短縮すると、こうなります。
A・B・C(D(Eを含む))の革新的な開発
A=新製品
B=新技術
C=新サービス
D=既存技術の転用や隠れた価値の発掘
E=設計・デザイン、アイデアの活用等
短い文章ですが、なかなか難解なので、分解していきます。
読み解きのキーワード①「新」
ものづくり補助金に申請する大前提が「新製品・新技術・新サービス」です。
大前提として、現在取り扱っている従来製品・従来技術・従来サービスのための設備投資は対象になりません。
試作開発は、そもそも新製品・新技術・新サービスを事業化するために行うものですから、「新」でないわけがありません。
読み解きのキーワード②「革新的」
公募要領の基本要件は、次のように記載されています。
【基本要件】p.8(下線は引用者)
どのように他社と差別化し競争力を強化するかを明記した事業計画を作り、その実効性を含め、中小企業・小規模事業者の事業をバックアップする認定支援機関により確認されていること
申請者に求められるのは、「新製品・新技術・新サービス」を事業化するための補助事業を実施することで、「他社と差別化し競争力を強化する」ことです。
したがって、新たに設備を導入するとしても、それが「他社と差別化し競争力を強化する」ことにつながらなければ、公募要領が求める基本要件を満たさないということになります。
では、「革新的」とはどういうことかというと、実は公募要領の中で明示的な定義が与えられていません。
これについては、同じ中小企業庁の施策である「経営革新」がヒントになるでしょう。
「中小企業等の経営強化に関する基本方針」では、支援対象とする新事業活動について、以下のように定義しています(各都道府県における経営革新計画の審査基準となっています)(下線は引用者)。
個々の中小企業者にとって新たな事業活動であれば、既に他社において採用されている提供の方式の導入その他の新たな技術・方式等を活用する場合についても原則として支援する。
ただし、業種ごとに同業の中小企業(地域性の高いものについては同一地域における同業他社)における当該技術・方式等の導入状況を判断し、それぞれについて既に相当程度普及している技術・方式等の導入については支援対象外とする。
つまり、空前絶後・唯一絶対の新規性が求められているわけではなくて、競合関係となり得る同業または同地域の中小企業の間で、まだ一部でしか取り入れられていないことを新たにやるなら、経営革新として認めましょう、ということですね。
以上を踏まえて、公募要領で求める「革新的」とはどういうことかを考えると、
- 自社にとって新たな製品・技術・サービスであって、
- 同業または同地域の中小企業ではまだあまり普及していない技術・方式等を導入することで、
- 他社と差別化し競争力を強化すること
だと考えることができます。
読み解きのキーワード③「開発」
ものづくり補助金の公募要領では、あちこちに課題または技術的課題という言葉が出てきます。
審査項目では以下のようになります。
【審査項目】p.27(下線は引用者)
②サービス・試作品等の開発における課題が明確になっているとともに、補助事業の目標に対する達成度の考え方を明確に設定しているか。
③課題の解決方法が明確かつ妥当であり、優位性が見込まれるか。
④補助事業実施のための体制及び技術的能力が備わっているか。
やろうとしている○○が、革新的な新製品・新技術・新サービスであるだけでなく、その事業化にあたって技術的な課題が存在することが必要です。
この点について、相談者の方に、よく次のようなたとえ話で説明します。
———-
もしあなたがラーメン屋の店主で、革新的なラーメンを提供したいと考えているとします。やり方は2通り考えられます。
- A案:革新的なチャーシュー、革新的なスープ、革新的な麺を独自のルートで仕入れて提供する方式。
- B案:革新的なチャーシュー・スープ・麺を自店舗で製造するためのカスタマイズされた機械を導入して提供する方式。
A案は、とくに自社に技術がなくても、仕入れによって革新的なラーメンを提供することが可能です。ということは、他店も容易に模倣が可能です。
B案は、店長オリジナルのノウハウがあって、それをカスタマイズされた機械を導入することで実現するもので、設備投資や試作開発が必要ですが、実現した場合には、他店での模倣は容易ではありません。
———–
それぞれを、上記審査項目②③④に照らし合わせて評価したら、どうなるでしょう?
もうお分かりと思いますが、A案よりもB案の方が、審査項目の求める内容によりフィットし、高く評価されるでしょう。
注意しなければならないのは、だからといって、必ずしもA案の方がビジネスモデルとして劣るとか実現可能性が低いというわけではない、ということです。
A案は設備投資不要ですぐに実行に移して収益を上げることができますし、仮にヒット商品にならなければすぐにやめられるという点で低リスクです。ただ、ものづくり補助金の審査項目との相性はよくないというだけの話です。
もし私がそのラーメン店主ならば、第1段階として、新商品の期間限定キャンペーンを行うなどA案を試行して、うまくいけば定番メニュー化します。第2段階として、それで上がった収益を原資として設備投資するB案を計画し、ものづくり補助金の活用を考えます。
このようにすると、申請書の記述に求められる材料が自ずと整うことになります。
【申請書の記載内容その1:具体的な取組内容のa項】p.20(下線は引用者)
本事業の目的・手段について、今までに自社での取組みの経緯・内容をはじめ、今回の補助事業で機械装置等を取得しなければならない必要性を示してください。 また、課題を解決するため、不可欠な工程ごとの開発内容、材料や機械装置等を明確にしながら、具体的な目標及びその具体的な達成手段を記載してください。
読み解きのキーワード④()
()はワードではないですが、
新製品・新技術・新サービス(既存技術の転用や隠れた価値の発掘(設計・デザイン、アイデアの活用等を含む))
と、2重カッコになっているので、その読み解き方に注意が必要です。
さきほど、わかりやすさのために、日本語を記号に置き換えましたね。
- A・B・C(D(Eを含む))の革新的な開発
このとき、(D(Eを含む))は、【A・B・C】全体にかかると読むのか、Cだけにかかると読むのかによって、意味が変わってきます。
「・」(なかてん、なかぐろ)は、名詞を並列するときに使用する記号なので、(D(Eを含む)はCだけにかかると読むのが妥当だろうと解釈しています。
仮にもし(D(Eを含む))が【A・B・C】全体にかかるのだとすれば、
- B(D(Eを含む))
のパターンがある、ということになります。これを記号から日本語に戻すと、
- 新技術(既存技術の転用や隠れた価値の発掘(設計・デザイン、アイデアの活用等を含む))
となります。
すると、新技術とは、「既存技術の転用や隠れた価値の発掘」という意味に限定されてしまうことになり、既存技術の「改良」や、「既存技術ではできないことを可能にする技術」は何になるのか、という問題が出てきます。
公募要領には、新技術とは何かという明示的な定義がないのですが、一般用語として考えても、既存技術の「改良」や、「既存技術ではできないことを可能にする技術」が新技術であるとして、おかしくはないですね。
したがって、ものづくり補助金で求めているのは
- 新製品
- 新技術
- 新サービス(既存技術の転用や隠れた価値の発掘(設計・デザイン、アイデアの活用等を含む))
の3パターンであって、(既存技術の転用や隠れた価値の発掘(設計・デザイン、アイデアの活用等を含む))の部分は、新サービスとは何であるかの補足説明であると解するのが、内容的にも妥当であろうと考えるわけです。
読み解きのキーワード⑤「既存技術の転用や隠れた価値の発掘」
では、新サービスに求められる「既存技術の転用や隠れた価値の発掘」とは、どういうことでしょうか?これまた、公募要領で明示的な定義が与えられていません。
まず、新サービスとは、既存技術の転用であるか、既存技術の隠れた価値の発掘であるか、と定義しているのだと考えられます。
ということは、単に革新的な新サービスであるだけでは不十分で、そこには何らかの技術活用が求められていると解されます。
補助金の名称に「革新的サービス」とあり、対象類型として「革新的サービス」とあるからといって、ビジネスモデルの新規性だけで申請書を書いたとしても、評価されないのです。
たとえばA社のサービスを、畑違いのB社が販売するというビジネスモデルはそれ自体が画期的であるとしても、サービス内容も提供方法も何も変わらないのであれば、単に販路開拓の範疇に留まる話となります。
で、転用とは何かといえば、一般的に、モノや技術を本来とは違う目的・用途に使うことを指します(たとえば、農地の宅地への転用、といった具合)。
「既存技術の転用」とは、従来からある技術だけれども、従来とは違う目的・用途に使うことで、今までになかったサービスを生み出させるなら、それが新サービスなんだ、ということになるでしょう。
たとえば、通常は印刷会社が使うような製本機付きのデジタル印刷機を、旅行業の会社が導入し、旅行者1人ひとりの旅程や関心事に合わせてカスタマイズされた、印刷品質の高い「旅行のしおり」を提供するサービスを開始するような場合などが考えられます(あくまで「転用)の例示であって、これが採択されたとか、これなら採択されるという意味ではないですよ)。
一方、「隠れた価値の発掘」とは何でしょうか?いよいよナゾナゾの様相を呈してきます。技術の世界に、ここだけ文学が入り込んできているような感じがします。
読み解きのキーワード⑥「設計・デザイン、アイデアの活用等」
「既存技術の転用や隠れた価値の発掘」の後に、(設計・デザイン、アイデアの活用等を含む)という括弧書きがついています。この()はどこにかかるのかといえば、「隠れた価値の発掘」ですが、それは何かの定義がありません。
ここは、新製品でなくても、新技術でなくても、既存技術の転用でなくても、設計上の工夫をしたり、デザインの刷新をしたり、新しい発想(アイデア)で試作開発をするよ、それで差別化して競争力を強化できるんだよ、ということであれば、ものづくり補助金の対象に入れましょう、という部分と考えられます。
その部分に名前を与えたら、「既存技術の隠れた価値の発掘」という表現になったのでしょう。技術的には可能なのに、まだ掘り起こしていないマーケットがある、そこに製品投入したらユーザーへの価値提供ができるのでは?知恵絞ってみて!という投げかけなのかもしれませんね。
たとえば大人向けしかない製品を同業他社に先駆けて子ども向け市場に投入したいという場合、既存技術の目的・用途は同じですが、対象者が変わります。
これに対応して小型化するなら「設計」変更、色や見た目など「デザイン」の刷新、子どもが喜ぶ新しい機能を付加するという「アイデアの活用」等が必要になるでしょう(これもあくまで「隠れた価値の発掘」の例示であって、これが採択されたとか、これなら採択されるという意味ではないですよ)。
ただ、審査項目(2)「技術面」の中の一項ですから、「隠れた価値の発掘」といっても、とにかく技術的課題と無縁であってはいけないわけで、単にキャッチコピーを変えただけで中身は同じ、というようなものは対象外ですね。
読み解きのキーワード⑦「を含む」
何の前置きもなく「△△(××を含む)」という日本語を見た場合、2通りの解釈が可能です。
1つ目は、△△の一例として××もあるよ、と例示している場合です。たとえば、「ビール類(発泡酒・第3のビールを含む)」のようなかたちで、あえて、「××も△△のうちに含まれるんだよ」、と確認したい場合の使い方ですね。
2つ目は、△△の要件として、××を含むことを示したい場合です。たとえば、「ちとかライス(辛みとして、唐辛子とマスタード(洋からし)のWからしを含む)」のようなかたちで、「△△には××が含まれなければならない」ことを確認したい場合の使い方ですね。
※余談ですが、ちとかライスは、経堂の「はしぐち亭」で食べられます。
では、「既存技術の隠れた価値の発掘(設計・デザイン、アイデアの活用等を含む)」は、どちらなんでしょうか?
どちらでもよさそうなのですが、仮に申請内容(やろうとしている○○)が、新製品でも、新技術でも、既存技術の転用でもない、しかし、ものづくり補助金を活用したいのであれば、「設計・デザイン、アイデアの活用等を含む」技術的課題があることを申請書に記述していく必要があります。この場合は、事実上、マストの要件となりますね。
申請者の方へ
ここまでに挙げたキーワード7種の読み解きは、本当は、公募要領に、誰が読んでも誤解のしようがないくらい、分かりやすく「定義」として示しておいてほしいところです。
そうすることで、採択されるはずもないのに貴重な時間と労力を申請書の作成に使ってしまうことや、解釈を間違えて書き損なってしまうことが防げます。
前者は時間と労力のムダづかいをしたという意味で、後者は惜しいことをしたという意味で、つくづくもったいないと思うのです。
実は、私が行うものづくり補助金に関する個別のご相談やコンサルティングの中でも、核心となる部分ですが、ここであえて公開するのは上記のような思いがあるからです。
中小企業、とくに経営者のリソースは限られていますから、同じ労力をかけるなら、ぜひとも、成果につながる確率の高いことにかけてほしいのです。
というわけで、まとめになりますが、下の図を参照していただき、ご自身のやりたい○○が、図中のどれかに該当するかどうか、誰がどう考えても該当するという結論に至れるか、チェックしてみてください。
それでもよくわからない、第3者の意見を聞きたいなどの場合は、コチラから個別相談をお申込みください。
2018年2月28日公募開始!(3/9東京都説明会出席後、加筆修正→青字・見え消し)
中小企業庁HPに、H29補正「ものづくり補助金」公募開始の案内が掲載されました。
以下、公募要領にもとづいて、かいつまんで解説していきますが、必ず、公募要領の記述そのものを確認してください。
全国事務局の全国中小企業団体中央会のHPに掲載されている公募要領と、実際の申請・精算等の窓口となる都道府県事務局(各都道府県の中小企業団体中央会)とで、記載内容が若干異なる場合がありますので、その場合は都道府県事務局の公募要領が「正」となります。
また、記載内容の詳細については、都道府県事務局の説明会への出席、問合せにより確認するのがもっとも確実です。
以下、東京都事務局版の公募要領で解説していきます。
スケジュール(いつまでに)
申請期間
申請期間は平成30年2月28日(水)~4月27日(金)とされていますので、公募開始からゴールディンウィーク前までの2ヶ月勝負です。
採択結果の発表は「6月中」とされています。末日の6月30日が土曜日なので、6月29日(金)またはそれより前に発表されることになるでしょう。
通常、その後、採択者向け説明会があり、あらためて交付申請を行い、交付決定通知を受けてからの事業着手となります。これに1ヶ月くらいかかると想定すると、導入する機械設備等の発注・契約ができるのは、実質8月以降になるでしょう。
本稿を書いている時期はちょうど受験シーズンですが、受験になぞらえると、採択通知というのは合格通知に相当します。試験にはめでたく合格しましたが、それだけではまだ入学できません。所定の手続きを経たあとに入学許可書が出て、晴れて入学確定という段取りですね。
で、入学許可書に相当するのが交付決定通知書です。
ものづくり補助金もそうですが、ほぼすべての補助金において、交付決定日(交付決定通知書に記載されている年月日)以降に着手した事業が補助対象となると定義されていますので、その前提で補助事業の計画を立案する必要があります。くれぐれも、採択通知の段階で、喜び勇んで発注をかけないようご注意を!
事業期間
事業の実施と完了にも期限があります。
①企業間データ活用型、②一般型、③小規模型の3事業類型があり、詳細は後述しますが、どの事業類型で応募するかによって、完了期限が異なります。
①企業間データ活用型と②一般型は、平成30年12月28日(金)まで、③小規模型は平成30年11月30日(金)までで、それまでにシステム開発・設備導入・試作開発等の事業自体の完了と、すべての支払いと手続きも完了する必要があります。
したがって、公募要領の要件を満たして、平成30年8月~11月(または12月)の期間に確実に納品できる設備等が対象、ということになります。一品モノの特注品や、カタログスペックからのカスタマイズが必要な場合などは、納期が上記の事業期間内に収まるかどうか、発注先予定者と念入りに確認しておく必要があります。
なお、上記完了期限間際になると、実施報告書の提出が殺到します。当然、1件1件の確認・処理に時間がかかりますので、できるならば期限よりも早めに完了して報告を提出したほうが、補助金の着金も早くなります。
着金時期をあらかじめ想定することは難しいですが、補助金は着金した期の雑収入となり、営業外収入として処理されますので、経常利益の押し上げ要因となります。気の早い話ですが、実は、補助金の着金時期を見越して、最初から資金繰り計画と、およそ1年後の決算対策をある程度想定しておく必要があるのです。
2次公募
時期・内容は未定ですが、2次公募が行われることが、公募要領に明記されています。したがって、4月27日までの公募は1次公募となりますが、1次公募期間中に2次公募がかかる場合もあれば、1次公募の採択結果発表と同時または直後に2次公募がかかる場合もあります。
4月27日は間に合わないけれども、平成30年度中にはやりたい、という事業がある場合は、2次公募に向けての準備を進めておきましょう。
補助対象事業者(誰が)
補助対象事業者は、「日本国内に本社及び実施場所を有する中小企業者に限ります」とされています。
つまり、海外本社である、実施場所が海外である、大企業である、のいずれかに該当する場合は、そもそも申請しても門前払いということです。
「日本国内に本社を有する」かどうかは、提出時に提出する書類のうち、法人の場合は「定款若しくは登記事項証明書」で、個人事業主の場合は「確定申告書、納税証明書の写し等」で確認を受けることになります。
「日本国内に実施場所を有する」かどうかは、事業計画書の内容次第ですね。たとえば「○○国(日本以外の国明)の自社工場に、補助金で導入した機械を設置する」内容であれば、実施場所が日本国外ですから、対象になり得ない、といことになります。
この2点は、日本国に税金を払っているかどうか、日本国の税収に寄与するかどうか、という観点と考えればよいでしょう。
3点目の「中小企業者」かどうかについては、そもそも目的が中小企業支援だからで、具体的には公募要領に資本金・常勤従業員数で定義されています。製造業であれば、「資本金3億円以下または常勤従業員数300人以下」です(いずれか一方の要件を満たせば対象となります)。
業種にかかわらず、資本金が5000万円以下、常勤従業員数が50人以下であれば、「中小企業者」に該当すると考えて差し支えないですが、業種によって定義が異なるので、公募要領で最初に確認しておきましょう。組合や、組合の連合会も申請可能な場合があります。
で、公募要領の「中小企業者」の定義に当てはまらない事業者が、「大企業」ということになります。資本金と常勤従業員数という外形で決まる話で、売上規模や上場か非上場かなどは関係ありません。
ただし、「みなし大企業」という規定があって、注意が必要です。定義上「大企業」とみなされる親会社が1/2以上の株を持っている子会社などは、資本金と常勤従業員数だけでみれば「中小企業者」であっても、「みなし大企業」になってしまい、補助対象外となります。
見積をとって、事業計画を詰めて、必要書類を全部取り揃えて、あとは提出するだけ、となって最後の最後に公募要領で最終確認したら、実は「みなし大企業だった!」では、泣くに泣けません。
まさかそんなことないでしょう、とお思いになるかもしれませんが、過去、申請準備期間中の「増資」によって資本金基準を満たさなくなった事例がありました。
補助内容(何を)
基本的内容
1月5日の公募予告の線と同じです(当然ですが)。
ただ、今回の公募内容は例年に比べて複雑かつ未定部分が少なからずありますので、読み解きに注意が必要です。
- 事業名:平成29年度補正予算「ものづくり・商業・サービス経営力向上支援事業」
- 目的:中小企業・小規模事業者が取り組む生産性向上に資する経費の一部を補助することにより、中小企業・小規模事業者の生産性向上を図ること
- 補助対象:中小企業・小規模事業者が取り組む生産性向上に資する革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資等の経費
- 補助事業の類型:対象類型2種×事業類型3種=6パターン
対象類型
申請する事業が「革新的サービス」と「ものづくり技術」、いずれに該当するのか、という観点です。
些末な話ですが、「ものづくり補助金」というくらいですから、従来は公募要領での記載の順番は「ものづくり技術」が先、「革新的サービス」が後でした。今回は逆になっています。事業名に「経営力向上」というキーワードが加わり、製造業だけでなく、より広い業種を対象としたい、といった意図があるのかもしれませんね。
「革新的サービス」類型に該当するかどうか
①「中小サービス事業の生産性向上のためのガイドライン」で示された方法で行う革新的なサービスの創出・サービス提供プロセスの改善であること
②3-5年計画で、「付加価値額」年率3%及び「経常利益」年率1%の向上を達成できる計画であること
1点目は事業内容と方法の観点、2点目は収益性の観点ですね。
事業の「方法」については、上記のガイドラインで10項目に分類されているので、そのどれに該当するのかの「当てはめ」ということになります。
事業の「内容」は事業計画書で詳述することで、ここが本質的な審査対象となります。
収益性について、「付加価値額」、「経常利益」は、それぞれ、公募要領に記載されている定義で計算する必要があるので、注意が必要です。言葉は同じでも、通常の経理・財務・決算等で使う場合と異なるので、「」に入っています。
- 「付加価値額」=営業利益+人件費+減価償却費
- 「経常利益」=営業利益-営業外費用(支払利息・新株発行費等)
「付加価値額」は、事業活動の成果として会社に残るキャッシュ(営業利益+減価償却費)と、人件費の合計額という定義です。
「経常利益」は、営業外収入や特別損益は考慮しないで、本業の稼ぐ力(営業利益)だけで財務関連費用を賄い切れるかを評価したいという定義でしょう(これを計算した結果がマイナスなら、たとえば営業利益で支払利息を払いきれないという状況です)。
補助事業による経営力向上の度合いを、この2つの指標で計画する、ということになります。
「ものづくり技術」類型に該当するかどうか
①「中小ものづくり高度化法」に基づく特定ものづくり基盤技術」を活用した革新的な試作品開発・生産プロセスの改善を行うこと
②3-5年計画で、「付加価値額」年率3%及び「経常利益」年率1%の向上を達成できる計画であること
1点目は事業内容と方法の観点、2点目は収益性の観点ですね。
事業の「方法」については、特定ものづくり基盤技術12分類のどれに該当するのかの「当てはめ」ということになります。
事業の「内容」は事業計画書で詳述することで、ここが本質的な審査対象となります。
2点目は、革新的サービス類型と同じなので省略します。
「ものづくり技術」か「革新的サービス」か悩む場合は?
ものづくり=製造業、サービス=商業・サービス業と、業種で分ける訳ではないので、意外とスパッと割り切れないかもしれません。
そもそも「革新的」なことをやろうというわけですから、前例がないか少ないので、なおさらです(前例がたくさんあるなら、革新的とは言えないですね)。
以前の相談事例ですが、「ものづくり補助金に落ちたのですが、理由がわかりません、申請書を見てアドバイス頂けますか?」ということで拝見させていただいたところ、内容的には「革新的サービス」類型であるのに、「ものづくり技術」類型の申請書を用いていた方がいらっしゃいました。
これなどは、落ちた理由は「違う対象類型で申請したから」。内容を精査する以前に、要件を満たしようがないし、審査員も審査のしようがなかったでしょう。
そうならないために、初期段階で、ものづくり補助金の経験が豊富な認定支援機関に相談するか、都道府県事務局に直接問い合わせることをおすすめします。
事業類型
対象類型は、過年度のものづくり補助金から継続されていますが、事業類型は、年度ごとに変わっています。「去年はこうだったから」は、いったん忘れる必要があります。
今回は、①企業間データ活用型、②一般型、③小規模型の3類型で、事業期間や補助金額の上限、補助対象となる費用の範囲が異なります。
①企業間データ類型は、今回新たに登場したもので、具体的にどのような事業が想定されているかは先行事例もないので、わかりづらいところです。都道府県事務局の説明会で、公募要領に書かれていない部分の補足として説明されるものと期待しています。
- 概要:複数の中小企業・小規模事業者が、事業者間でデータ・情報を活用(共有・共用)し、連携体全体として新たな付加価値の創造や生産性の向上を図るプロジェクト
- 補助上限額:1,000万円
- 補助率:2/3以内
- 設備投資:必要
- 補助対象経費:機械装置費、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウド利用費
「例えば、複数の事業者がデータ等を共有・活用して、受発注、生産管理等を行って、連携体が共同して新たな製品を製造したり、地域を越えた柔軟な供給網の確立等により、連携体が共同して新たなサービス提供を行う取組みなどが該当します。」と例示されていますが、2ヶ月間という期間内に、複数の事業者で連携体を組成し、ここまで事業計画を練りこむのは相当大変な作業でしょう。
この連携体については、「幹事企業を含めて10者まで。補助上限額は1者当たり200万円が追加され、連携体参加者数を乗じて算出した額を上限に連携体内で配分可能。」という注記がついています。
これもわかりにくいのですが、補助上限額は、連携者数×1000万円+連携者数×200万円で計算されます。るようです(計算式で示してほしいところ)。「連携体内で配分可能」の「配分」も含めて、1社当たりの金額は、申請時点で確定させる必要があり、採択後に変更はできません。とはいったいどういう意味か、これもよくわかりません。説明会等で判明してきたら追記します。
②一般型は例年通りですが、補助率について、1/2→2/3に引き上げる例外措置が設定されています。
- 概要:中小企業・小規模事業者が行う革新的なサービス開発・生産プロセスの改善に必要な設備投資等
- 補助上限額:1,000万円
- 補助率:1/2以内
- 設備投資:必要
- 補助対象経費:機械装置費、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウド利用費
補助率引き上げの例外措置の1つ目は、「先端設備等導入計画」認定です。ところが、前提となる法律も未成立で、当然、固定資産税の特例措置を講じた市町村はなく、「先端設備等導入計画」の内容もわかりません。どうやって申請し審査するのでしょうか?①3月中に特例措置実施に関する自治体アンケート結果が中小企業庁HPで公表されるので、自社の事業実施場所がそこに含まれているかどうかを確認、②補助率引き上げを受けたい場合は当該市町村に「先端設備等導入計画」を申請、③事業者が自治体から計画認定を受けた後に交付決定、ということになります。
生産性向上特別措置法(案)(平成30年通常国会提出)に基づき、固定資産税の特例率をゼロの措置をした市町村において、補助事業を実施する事業者が「先端設備等導入計画」の認定を取得した場合
例外措置の2つ目は、「経営革新計画」の承認ですが、補正予算案の閣議決定日以降に申請・承認された場合だけが対象になるので、それまでに申請・承認された計画は対象になりません。①下記要件を満たす計画の承認申請書の写しを補助金応募申請時に添付し、②承認通知書を提出後に交付決定、ということになります。また、4月27日までに承認まで至るのは、スケジュール的に至難の業です。
3-5年で、「付加価値額」年率3%及び「経常利益」年率1%に加え、「従業員1人当たりの付加価値額」(=「労働生産性」)年率3%を向上する中小企業等経営強化法に基づく経営革新計画を、平成29年12月22日の閣議決定後に新たに申請し承認を受けた場合
というわけで、事業計画や資金繰り計画に大きく影響する補助率の決定条件の詳細が、公募要領だけではわからないところがありますので、説明会等で判明し次第、追記します。
申請様式1のチェックリストをみると、この2項目は、いずれも計画の認定や承認に関して、「予定」でもチェックを入れられます(というか、予定でしかチェックできない場合がほとんどでしょう)。チェックが入っていなければ補助率引き上げの対象にならないのですが、上記の通り、先端設備等導入計画の認定、経営革新計画の承認が受けられない場合は交付決定を得られず、採択されても補助事業を行えません。また認定・承認が遅れると、着手も遅れるので、期限内の事業完了が難しくなる可能性が出てきます。補助率は高いに越したことはないのですが、よくばって無理な申請をすると、結局何も得られない、ということにもなりかねません。慎重に考えた方がよさそうです。、とにかくチェックをつけておいた方がよいでしょう。
③小規模型には設備投資のみ型と、試作開発等型があります。設備投資のみ型は、補助上限額と事業期間以外は、一般型と同じです。補助率の引き上げ措置も同じです。
- 概要:小規模な額で中小企業・小規模事業者が行う革新的なサービス開発・生産プロセスの改善に必要な設備投資等
- 補助上限額:500万円
- 補助率:1/2以内
- 設備投資:必要
- 補助対象経費:機械装置費、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウド利用費
試作開発等型は、補助上限額と事業期間以外は、一般型と同じです。補助率の引き上げ措置も同じです。ただし、設備投資はしてもしなくてもかまいません。また、試作開発等に必要な費目が補助対象になります。
- 概要:小規模な額で中小企業・小規模事業者が行う試作品開発(設備等を伴わない試作開発等を含む)
- 補助上限額:500万円
- 補助率:1/2以内
- 設備投資:可能(必須ではない)
- 補助対象経費:機械装置費、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウド利用費、原材料費、外注加工費、委託費、知的財産等関連経費
各類型共通の注釈は以下のとおりです。
生産性向上に資する専門家の活用
生産性向上に資する専門家の活用を行う場合には、補助上限額の30万円の増額が可能です。たとえば、生産性向上のためのコンサルティング費用が補助対象になると考えればよいでしょう。
ただし、計画の確認書を発行した認定支援機関や、事業計画書の作成を支援した者は、この「専門家」にはなれないので、注意が必要です。
事業計画書(どのように)
事業計画書は、申請する事業者ごとに千差万別なので、一概に、こうすればいいという成功法則のようなものはありません。
事業計画書の様式(様式2)の、「事業の具体的な内容」を書く欄は、例年同様、白紙の枠があるのみで、どのように記載するかは、申請者の自由です。
ただ、そうは言ってもフリーハンドではありません。公募要領に、その1:具体的な取組内容、その2:将来の展望にわけて、記載すべき内容のガイドが示されています。
また、公募要領に「審査項目」が示されています。これらの項目については、「書いてなければ審査できない」ので、もれなく記載する必要があります。項目だけ列挙すると以下の通りです。
- 補助対象事業としての適格性(補助対象外事業に該当しない)
- 技術面:革新性、収益性(「付加価値額」「経常利益」)、課題明確化、課題解決策、優位性、体制・技術的能力
- 事業化面:体制、財務状況、ユーザー・マーケット・市場規模、優位性、収益性、遂行方法、スケジュール、費用対効果
- 政策面:他企業のモデル、賃金上昇、地域経済・雇用支援、資金調達、経営資源の蓄積
- 加点項目:先端設備等導入計画認定、経営革新計画承認、経営力向上計画認定、地域経済牽引事業計画承認、総賃金1%賃上げ、小規模企業者、九州北部豪雨被災企業
過去の相談経験から、この審査項目を注意深く熟読玩味している方はほとんどいませんが、申請書作成作業上は、ここが一番重要な確認ポイントだと言っても過言ではありません。ついでながら、どんなに「アツイ思い」や「必死さ」をアピールしても、どの審査項目について書いているのか判然としない場合には、審査材料になりません。
したがって、「補助事業で実施したい具体的な取組内容と将来展望について、審査項目をもれなくカバーし、審査に必要十分な情報が含まれるように作成する」というのが、事業計画書作成の基本線です。
ここまでお読みになって、「よし、あらましはわかった、書こう!」と思って実際に事業計画書を書ける経営者もいらっしゃいますが、そうではない方の方が圧倒的に多いでしょう。
ここから先、事業計画書を自力作成するか、専門家支援を受けるか、ご自身のかけられる時間と労力、得られるメリットを勘案して判断してください。
2018年2月2日事務局決定、公募開始秒読みへ
中小企業庁HPに、H29補正「ものづくり補助金」の事務局決定の案内が掲載されました。
11件の応募があったということで、意外と多くの団体が申請したのかな、という印象です。
しかし、結果としては、例年と同じく全国中小企業中央団体に決定しています。
なお、1月22日に審議入りしていた平成29年度補正予算が、政府案通り、2月1日可決成立しました。
予算成立・事務局決定、あとは公募開始を待つのみです。
2018年1月5日公募事前予告
中小企業庁HPにて、H29補正「ものづくり補助金」の事務局募集と公募事前予告が行われました。
- 事業名:平成29年度補正予算「ものづくり・商業・サービス経営力向上支援事業」
- 目的:中小企業・小規模事業者が取り組む生産性向上に資する経費の一部を補助することにより、中小企業・小規模事業者の生産性向上を図ること
- 補助対象:中小企業・小規模事業者が取り組む生産性向上に資する革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資等の経費
事務局募集
ものづくり補助金の公募・審査・精算等の実務を運営する事務局の公募です。
募集期間は平成30年1月5日(金)~1月24日(水)で、事務局が決定後、H29年度補正予算成立から1ヶ月程度後に公募が開始される予定です。
公募資料では、事務局による事業の実施期限は「平成30年3月末まで」と記載されていますが、「平成30年3月末まで」の誤記ではないでしょうか?
事務局公募ということですが、例年、全国中小企業中央団体が事務局本部となり、実際の窓口は各都道府県の中小企業団体中央会が担う形となっています。
過去のものづくり補助金事業の業務の蓄積のない他の組織が、新たに選定されるとは考えにくいでしょう。
公募事前予告
事務局募集の公募要領の中に埋め込まれる形で、別添3として今年度の補助対象要件等も開示されています。
業務の概要、応募方法その他留意していただきたい点は、この公募要領に記載するとおりです。応募される方は、熟読いただくようお願いいたします。
と書いてあるので、応募をお考えの経営者は、こちらを熟読して、準備に着手しましょう。
しかし、どう読むと熟読したと言えるのでしょうか?
過去のご相談・ご支援の経験から、「なぜうちの申請が落ちたかわからない、おかしいよ!」とおっしゃる方の申請書を拝見させていただくと、ほとんどの場合、公募要領を読んでいない・読んだけれど読み間違えたり独り合点しているために、要件を満たさない申請書を書いてしまっているのです。
極端な場合は、革新的サービス類型の内容なのに、ものづくり類型の様式を使っていた例がありました。この例などは、内容を読む以前に、様式が違っていますから、審査すること自体が不可能だったと思われます。認定支援機関の確認書があったのに、なおさらお気の毒でした。
というわけで、以下、筆者はこのように読みますよ、という解説をしますので、熟読の参考になさってください(網掛け部分と表が、原資料からの引用です)。
なお、予算成立、公募開始までに、若干の変更が入る可能性はありますので、ご留意ください。
補助対象事業
中小企業・小規模事業者の生産性向上に資する設備投資等を補助することが目的で、事業内容は①革新的サービス開発、②試作品開発、③生産プロセスの改善の3類型が想定されています。
足腰の強い経済を構築するため、日本経済の屋台骨である中小企業・小規模事業者が取り組む生産性向上に資する革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資等の経費の一部を補助する。
補助対象者
まず、「認定支援機関の全面バックアップを得た」と書かれている点が、特徴的です。例年より、認定支援機関の関りが重要視されていると解されます。
認定支援機関の全面バックアップを得た事業を行う中小企業・小規模事業者であり、以下の要件のいずれかを満たす者。
ただし、「全面バックアップ」の内容は明示されていません。
あくまで想定ですが、2017年11月29日付「平成30年度予算の編成等に関する建議」の記載内容を踏まえると、
- 中長期の経営計画の精度、とくに収益性のチェック
- 資金調達面の支援(端的に言えば融資)の確度
等が重視されてくるのではないでしょうか。計画内容の精査と融資の事前相談のために、認定支援機関にできる限り早く相談しましょう。
具体的な要件は次のとおりです。「3~5年で付加価値額年率3%以上、かつ、経常利益年率1%以上の向上」を達成できる計画を立ててください、ということです。
「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」で示された方法で行う革新的なサービスの創出・サービス提供プロセスの改善であり、3~5年で、「付加価値額」年率3%及び「経常利益」年率1%の向上を達成できる計画であること。
または「中小ものづくり高度化法」に基づく特定ものづくり基盤技術を活用した革新的な試作品開発・生産プロセスの改善を行い、3~5年で、「付加価値額」年率3%及び「経常利益」年率1%の向上を達成できる計画であること。
サービス事業においては、革新的なサービスの創出and/orサービス提供プロセスの改善であること、ものづくり事業においては、革新的な試作品開発and/or生産プロセスの改善であることが必要です。
従来もそうですが、耐用年数を経過した設備を単純にリプレースする場合、単に新しい機械装置等を導入するだけでサービス・製品・生産プロセスの革新にはつながらない場合などは、革新性の部分で要件をクリアするのが難しいでしょう。
ものづくり補助金のご相談者にはいつもお伝えするのですが、要件をクリアするには「体操日本代表の白井健三選手並みに、ひねる必要があります」。
より具体的な要件や審査基準は、公募要領に記載されます。
補助対象事業の具体的な内容と補助額等
ここが一番関心の高いところですね。今年度は、ちょっと、というか、かなり複雑です。
なお書き、※印の備考まで、注意深く読み解く必要がありますが、これから新たに導入される制度を前提としている箇所もあるので、現時点では詳細がわからない部分も残されています。
類型 | 対象経費の区分 | 補助上限額 (補助下限額) | 補助率 |
1.企業間データ活用型 (※1)(※2) | 機械装置費 技術導入費 運搬費 専門家経費 クラウド利用費 | 1,000万円 (100万円) | 3分の2 |
2.一般型 (※1)(※3) | 機械装置費 技術導入費 運搬費 専門家経費 クラウド利用費 | 1,000万円 (100万円) | 2分の1 |
3.小規模型 (※1) | 機械装置費 原材料費 技術導入費 外注加工費 委託費 知的財産権等関連経費 運搬費 専門家経費 クラウド利用費 | 500万円 (100万円) | 小規模事業者: 3分の2
その他: 2分の1 |
注)見やすくするために筆者が表組を一部改変していますが、内容の改変はありません
なお、平成 30 年通常国会提出予定の生産性向上の実現のための臨時措置法(仮称)に基づき、固定資産税ゼロの特例を措置した自治体において、補助事業を実施する事業者について、その点も加味した優先採択を行う。
※1 本事業遂行のために必要な専門家を活用する場合 補助上限額30万円アップ
※2 連携体は10者まで。さらに 200 万円×連携体参加数を上限額に連携体内で配分可能
※3 以下のいずれかの場合には補助率 2/3
・平成 30 年通常国会提出予定の生産性向上の実現のための臨時措置法(仮称)に基づき、固定資産税ゼロの特例を措置した地方自治体において補助事業を実施する事業者が、先端設備等導入計画(仮称)の認定を取得した場合
・3~5年で、「付加価値額」年率3%及び「経常利益」年率1%に加え、「従業員一人当たり付加価値額」(=「労働生産性」)年率3%を向上する中小企業等経営強化法に基づく経営革新計画を、平成 29 年 12 月 22 日の閣議決定後に新たに申請し承認を受けた場合(上記の法律に基づく計画は、応募段階には計画申請中等で認める予定)
まず、補助額・補助率ですが、補助上限額は1,000万円となり、前年度までの3,000万円枠はなくなりました。補助率は、一律3分の2ではなく、2分の1の場合もあります。
なお書きで、「平成 30 年通常国会提出予定の生産性向上の実現のための臨時措置法(仮称)に基づき、固定資産税ゼロの特例を措置した自治体において、補助事業を実施する事業者について、その点も加味した優先採択を行う。」とあるのですが、その法律自体が未成立で、どの自治体が「固定資産税ゼロの特例を措置」するのかも現時点ではわかりません。
全類型共通の※1で、「本事業遂行のために必要な専門家を活用する場合 補助上限額30万円アップ」とあるので、認定支援機関をはじめとするコンサルタント等の活用がしやすくなるでしょう。
企業間データ活用型だけに適用される※2で、「連携体は10者まで。さらに 200 万円×連携体参加数を上限額に連携体内で配分可能」とあるのは、たとえば発注者と受注者の間での受発注データ連携を行う場合、各社が導入する機械装置や費用負担するクラウド利用費などがあれば、上限1000万円とは別枠で、200万円×連携者数分の補助金の上乗せがあるよ、ということです。
一般型だけに適用される※3で、「先端設備等導入計画(仮称)の認定」または「一定要件を満たす経営革新計画(申請中でも可)」は、補助率を2分の1から3分の2に引き上げとされていますが、「先端設備等導入計画(仮称)」の詳細は不明です。また、平成29年12月22日以後に新たに申請という条件がついているので、経営革新計画の承認もハードルが高いですね。
小規模型の場合のみ原材料費、外注加工費、委託費、知的財産権等関連経費への補助が認められます。これらは試作品製作に関係する費用です。
補助予定件数
補助予定件数は、2017年11月16日の安倍総理大臣の発言どおり、「約1万件」です。
予算額が1000億円ですから、単純計算で1件1000万円ということになりますが、補助額上限以下での申請や、小規模型の採択件数によっては、総数は増える可能性があります。
約1万件
(参考:平成28年度補正革新的ものづくり・商業・サービス開発支援補助金公募、申請数 15,547件、採択数 6,157件)
参考として記載されているH28補正の場合、採択率は39.6%、ほぼ4割でした。
2017年12月25日補正予算説明資料
類型、補助額、補助率の概要がわかります。
原資料はこちらのp.17です。他の補助金の情報も併せてご覧になってください。
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お近くに、ものづくり補助金について、上記のように詳しく教えてくれる認定支援機関がみつからない場合は、筆者も認定支援機関なので下記よりご相談ください。