H30補正「事業承継補助金」解説(2/15更新)
この記事の目次
補助金事務局決定(2/15)
中小企業庁より、補助金事務局が「一般社団法人サービスデザイン推進協議会」に決定した、との発表がありました。
H29補正事業承継補助金と同じです。
何をしている団体か、ちょっと調べてみたところ、「おもてなし規格認証」の認定機関でした。
IT導入補助金を申請された企業は、最低、おもてなし規格の紅認証はとられていると思います。
(紅認証は、認証といっても、無料登録できる自己適合宣言です)
H30補正事業承継補助金の特徴(1/20)
事業承継・再編・統合が中小企業支援のメイン施策となりつつあります。
その背景には、団塊世代経営者が一斉に70歳を迎え始める「2017年問題」があると考えられます。
およそ10年前には、団塊世代サラリーマンが一斉に60歳定年を迎える「2007年問題」が大きな話題となっていましたね。
しかし、経営者には定年はありませんから、そこで引退ということになはならず、10年がたちました。
最近の統計では、社長交代の平均年齢は70歳手前とされており、いよいよ団塊世代経営者の引退が現実化し始める時期なのです。
ところが、後継者が確保できなければ、社長が引退する道は、事業承継ではなく、廃業か、M&Aか、ということになります。
廃業が増えてしまったら、日本経済・地域経済は大変なことになって今いますから、政策課題として、事業承継とともに、再編・統合等が並ぶこととなるわけです。
社長は引退しても、事業は存続させてほしい、そのために、税制と予算を動員しますよ、という政府のメッセージです。
補助金の概要
対象事業者
事業承継補助金は、事業を承継することそのものではなく、承継後の新しいチャレンジを後押しする補助金です。
事業承継、M&Aをきっかけとして、新しいチャレンジを行う事業者に、その取組にかかる経費を最大1,200万円まで補助します。
事業承継そのものに対しての補助金ではないですし、承継後に特に新しいことを行わないのであれば、この補助金の対象にはなりません。
事業を承継した新社長が、自分の才覚・裁量で経営を革新したい!
そんな場合に使いでのある補助金ができた、と考えてください。
では、経営の革新とはどんなことかというと、H29補正事業承継補助金では、以下のように定義しています。
①新商品の開発又は生産
②新役務の開発又は提供
③商品の新たな生産又は販売の方式の導入
④役務の新たな提供の方式の導入
⑤その他の新たな事業活動で販路拡大や新市場開拓、生産性向上等、事業の活性化につながる取組
①~④は経営革新計画における「経営革新」と同じです。これに、⑤が加わっているので、経営革新計画の承認を得るよりはハードルが低め、対象範囲が広めになっていると考えてよいでしょう。
対象事業者
中小企業・小規模事業者等になると思われます。
中小企業の定義は次のとおり。
小規模企業者の定義は次のとおり。
なお、H29補正事業承継補助金では、事業承継の時期について、過去3年遡及して次のように定義していました。
2015年4月1日から補助事業期間完了日または、2018年12月31日のいずれか早い日までに、事業承継を行った(事業)者又は行う予定の(事業)者 ※一次募集公募要領
H30補正事業承継補助金では、1年たったので、「2015年4月1日から」が変わる可能性があります。
対象事業
事業承継後に行うチャレンジが幅広く対象となります。対象経費でいうと、次のとおり。
人件費、店舗等借入費、設備費、申請書類作成費用、知的財産権等関連経費、原材料費、謝金、旅費、マーケティング調査費、広報費、会場借料、外注費、委託費、在庫処分費、解体費及び処分費、移転・移設費
通常、固定費である「人件費、店舗等借入費」は補助金の対象となるケースが少ないのですが、対象になっています。
とはいえ、今すでに払っているものではなく、新しいチャレンジに伴って新たに発生する「人件費、店舗等借入費」が対象であろうと思われます(たとえば、新店舗等で新たに人を採用する場合)。
また、後ろ向きの費用として、「在庫処分費、解体費及び処分費」があるので、スクラップ&ビルドのスクラップがやりやすいですね(たとえば店舗・工場・オフィス等の移転や統廃合等)。
事業類型・補助額・補助率
事業類型は、Ⅰ型:経営者交代タイプとⅡ型:M&Aタイプの2種類。それぞれ、事業転換を伴う場合と、伴わない場合で補助上限額が異なります。
Ⅰ型:経営者交代タイプで事業転換なし→補助上限200万円(補助率1/2または2/3)
Ⅰ型:経営者交代タイプで事業転換あり→同500万円(同)
Ⅱ型:M&Aタイプで事業転換なし→同600万円(同)
Ⅱ型:M&Aタイプで事業転換あり→同1,200万円(同)
補助率の「1/2または2/3」ですが、H29補正事業承継補助金では、小規模企業の場合に2/3、それ以外は1/2となっていました。これが踏襲されるものと思われます。
小規模企業の定義は前掲のとおりです。
スケジュール
最後に、気になるのがスケジュールです。
まず、補正予算なので、予算の成立(衆参両院での予算案の可決)が前提条件となります。
2019年1月7日に補助金実施事務局の公募が始まっています。事務局でなく、この補助金を利用したい事業者の公募スケジュールは未公表ですが、もの補助と同様、もしくは、それよりも若干遅れめになるのではないでしょうか。
参照資料
以上の記述は、下記資料に基づいて筆者の見解をまとめたものです。
ご興味ある方は、直接原典をご確認ください。
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