H30補正「ものづくり補助金」解説(2/25更新)
この記事の目次
公募開始(2/18)
中小企業庁より、一次公募を開始する、との発表がありました。
公募期間は、
2019年2月18日(月)~
一次締切:2019年2月23日(土)【当日消印有効】
最終締切:2019年5月8日(水)【当日消印有効】
ということで、一次締切を設けて早期採択する段取りになっているのですが、、、
公募開始日を入れて6日で申請までこぎつけられた申請者が果たしてどれだけいたか。
やってみることに意義あり、というところでしょうか。
運用改善として3点挙げられているうちの1点目が、これです。
(1) 早期審査プロセス(ファストトラック)の導入
(2) 申請書類の簡素化
(3) Fintechとの連携
2点目の申請書類の簡素化については、「応募申請時に、定款や登記事項証明書の添付を不要」、「ホームページを持つ事業者は、会社案内の添付を不要」にするとのこと。
1時間くらいの時間短縮にはなるでしょう。
3点目のFintechとの連携については、
①購入型クラウドファンディングで一定の資金調達実績があれば加点
②開発した試作品を補助事業期間内に購入型クラウドファンディング等を用いてテスト販売することが可能
の2つの措置。
このうち①については、
「公募開始日1年前(平成30年2月19日)から応募申請日までの間に購入型クラウドファンディング等によって一定規模以上の支援金額を集めた企業」であり、
①設定した目標金額以上の支援金額を期間内に達成
②100万円以上の支援金額を期間内に達成
という条件で、既に自助努力でクラウドファンディングに取り組んでいた試作開発申請企業にとっては追い風ですね。
ただ、これから申請を考えようかという企業にとっては一次公募締切期間中に上記条件を達成するのは難しいでしょう。
購入型クラウドファンディングについては、Fintechを「事業者が活用する」ことを促進するねらいと思われますが、「制度的な連携」というところまで踏み込んでいるのが、
この他、補助金交付決定をもって抗弁付き電子記録債権を発生させ、これを担保に補助事業に必要な融資を受けられる取組を可能とするよう、現在、調整中です(詳細は決まり次第ご案内します)。
の部分でしょう。
ただ、このあたりは、筆者も通じているわけではないので、詳細が明らかにされた時点であらためて解説することとします。
(参考)電子債権についてはコチラを参照。
補助金事務局決定(1/31)
中小企業庁より、補助金事務局が「全国中小企業団体中央会」に決定した、との発表がありました。
例年通りです。
ちなみに「3件の応募がありました。」と書いてあります。
あと2件はどこだったのか、ちょっと気になります。
全国47都道府県で事務局業務を展開し、何万件という申請をさばき、何百億円の交付事務を適正に処理できる、
という自信がないと応募できないでしょう。
そんなことができる!と思った団体が、中央会以外に2件あったというわけです。
それはともかく、公募準備がこれから本格化します。
一次公募申請・早期採択をねらうなら、もう今の時点で、昨年度様式での申請書があらかた出来上がっていて、
公表された公募要領を見て、今年度様式に必要なチューニングをする、くらいの準備が必要ですよ。
H30補正もの補助の特徴(1/18)
正式名称は、「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」。目的は次のとおり。
新製品開発のための製造機械の購入や効率的な最新の加工機等の購入やシステム構築費用などを支援し、中小企業の生産性向上を図ります。
ここまでで、前年度までの「もの補助」との大きな違いが確認できます。
それは「システム構築費用」という文言が入ってきたこと。
従来はシステム構築は、もの補助の明示的な補助対象ではなく、実際の採択事例を見ても皆無とは言えませんが、極めて例外的でした。
しかし、今回は(まだ予告段階ですが)、複数の中小企業庁資料で「システム構築費用」が明記されていますから、もの補助の明示的な補助対象です。
同じくH30年度2次補正予算のIT導入補助金が、パッケージソフトやクラウドシステムのITツール導入への補助金となっていますが、こちらは基本的に開発を必要としないもの、
もの補助のシステム構築は開発を必要とするもの、という使い分け想定と思われます。
補助金の概要
対象事業者
中小企業・小規模事業者等とされています。
中小企業の定義は次のとおり。
小規模企業者の定義は次のとおり。
ただし、条件があって、
3~5年で、「付加価値額」年率3%及び「経常利益」年率1%の向上を達成できる計画が必要です。
また、資本金または従業員数が一定規模以下の「会社及び個人」ですから、会社以外の法人は基本的に対象外になります。
よく一般社団法人も申請できますか?と聞かれますが、「会社」ではないですね。
ただ、中小企業・小規模事業者「等」の注釈として、「一定の要件を満たすNPO法人も申請対象」とされているので、会社以外の法人としては例外的にNPO法人も申請可能となる場合がある、ということになります。
対象事業
繰り返しになりますが、
①新製品開発のための製造機械の購入
②効率的な最新の加工機等の購入
③システム構築費用
の3パターンです。
これらを実施することで、
3~5年で、「付加価値額」年率3%及び「経常利益」年率1%の向上を達成
できるような計画を立てて、申請します。
ちなみに、「経常利益」について、昨年度の公募要領では、
経常利益=営業利益-営業外費用(支払利息・新株発行費等)
となっています。
「経常利益」は、決算書のうち、損益計算書に記載されていますが、それは、
経常利益=営業利益+営業外収益-営業外費用(支払利息・新株発行費等)
で計算した金額です。定義が違うので、要注意です。
では、「付加価値額」って、何でしょう?昨年度の公募要領では、
付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費
となっています。
営業利益+減価償却費=ざっくりいって営業キャッシュフローで、会社の稼ぐ力を表しますね。
人件費は社員をどれだけの社員を養っているかのバロメーター。
というわけで、この事業を補助してくれたら、会社の稼ぐ力と社員を養う力が増えます、というストーリーを数字で示すのが申請書の要諦です。
事業類型・補助額・補助率
事業類型は、一般型・小規模型・企業間データ活用型・地域経済牽引型の4類型。
このうち一般型・小規模型は、補助額・補助率とも前年度と同様です。
企業間データ活用型は、1者当たりの金額が1,000万円→2,000万円に増額になっています。
地域経済牽引型は新登場ですね。1,000万円/者。
地域未来投資促進法に基づく地域経済牽引事業計画とのひもづけを狙う意図ですが、必ずしも同計画の承認を得ていなくても補助対象となるようです。
スケジュール
最後に、気になるのがスケジュールです。
まず、補正予算なので、予算の成立(衆参両院での予算案の可決)が前提条件となります。
すでに補助金実施事務局の公募が行われています。
上記事務局が決定後、実施事務局が、中小企業・小規模事業者が行う革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセス改善のための設備投資等の一部を補助する事業の、事業者向け公募を行います。これは、平成30年度補正予算の成立後、速やかに実施する予定です。
公募は1次公募と2次公募に分かれ、1次公募には早期締切が設定され、早ければ年度内(2019年3月まで)に採択発表が行われる可能性があります。
1次公募の早期締切に間に合い、かつ、競争力のある申請書を出すには、すでに現時点で補助事業の内容がほぼ固まり、見積取得や納期の確認がとれているぐらいまで進捗している必要があるでしょう。
これができる可能性がいちばん高いのは、前年度あえなく不採択だったけれど、どうしても再チャレンジしたいという事業者ですね。
2次公募は夏以降ということで、時期を明示していません。前年度は1次公募採択発表から2次公募開始まで、思いのほか間隔があきました。
事業者の事業実施期間を可能な限り長く確保する観点から、上記公募の際には、約2か月の公募期間を設けるほか、早期に公募を締め切って審査し、採択発表を速やかに(可能ならば年度内に)行うことを検討中です。
また、夏以降に2次公募を行うことも予定しています。
なお、事業実施期間(いつまでの事業を完了する必要があるか)は、まだわかりませんが、前年度は短めの設定でした(1次公募なら採択・交付決定後に着手して12月までに完了)。
したがって納期が1年以上かかるような設備・システム構築は、対象外となる可能性が高いと考えておいた方がよいでしょう。
参照資料
以上の記述は、下記資料に基づいて筆者の見解をまとめたものです。
ご興味ある方は、直接原典をご確認ください。