2018年の助成金はどうなる? 中小企業向け雇用関係助成金の動向~3/14更新~
この記事の目次
キャリアアップ助成金の平成30年度改正予定内容
平成30年度予算の成立及び雇用保険法施行規則の改正が前提のため、変更される可能性があります。
※事前にキャリアアップ計画の提出が必要です。
※すでにキャリアアップ計画を提出している事業主の方が当初の計画とは異なるコースを利用するなどの場合、事前にキャリアアップ計画変更届の提出が必要です。
正社員化コース
- 1年度1事業所あたりの支給申請上限人数を20人に拡充。
- 支給要件の追加(下記)。
正規雇用等へ転換した際、転換前の6ヶ月と転換後の6ヶ月の賃金総額(※)を比較して、5%以上増額していること。
※賞与や諸手当を含む総額。ただし、 諸手当のうち、通勤手当、時間外労働手当(固定残業代を含む)及び歩合給などは除く。
有期契約労働者からの転換の場合、対象労働者が転換前に事業主で雇用されていた期間を3年以下に限ること。
人材育成コース
- 人材開発支援助成金に統合。
平成30年3月30日までに訓練計画届の提出がされている場合に限り、引き続き、現在の人材育成コースとして支給申請することができる。
※本来は31日が提出期限→今年度は同日が土曜日のため、30日の金曜日が提出期限
※4月2日(月)に提出された訓練計画届は人材育成コースの対象とはならない
賃金規定等共通化コース
- 共通化した対象労働者(2人目以降)について、助成額を加算。
諸手当制度共通化コース
- 共通化した対象労働者(2人目以降)について、助成額を加算。
- 同時に共通化した諸手当(2つ目以降)について、助成額を加算。
【増額】人材開発支援助成金:201億円→431億円(+230億円)
平成29年度の助成金のうち、人材開発支援助成金(訓練コース)に、教育訓練・能力開発に関する他のメニューが統合されて、教育訓練・能力開発にフォーカスした助成金となります。
名称としては、「人材開発支援助成金」が継承されます。
- 人材開発支援助成金(訓練コース)
- キャリアアップ助成金(人材育成コース)
- 建設労働者確保育成助成金(認定訓練コース及び技能実習コース)
- 障害者職業能力開発助成金
目的 | 概要 |
事業主等が、計画に沿って、その雇用する労働者に対し、職業訓練等を実施した場合に、訓練経費や訓練中の賃金の一部等を助成する。 また、障害者の職業に必要な能力を開発し、向上させるための能力開発訓練事業を行う事業主やその団体または社会福祉法人等に対し、能力開発訓練事業に要する運営費及び訓練施設等の改善に要する経費の一部を助成することで、障害者の職業能力の開発・向上を行いマッチング機能の強化を図る。 | 既存の訓練コースについては減額 キャリアアップ助成金(人材育成コース)、建設労働者確保育成助成金(認定訓練コース及び技能実習コース)、障害者職業能力開発助成金を統合 全体としては増額 |
【廃止】人材開発支援助成金(制度導入コース)
平成28年度に「キャリア形成促進助成金」として始まり、平成29年度は「人材開発支援助成金」に統合された助成金です。
次の各制度を導入・実施した場合に、1制度につき47.5万円の助成金が支給されるというものでしたが、「制度導入関連のコースを廃止」ということで、29年度限りとなります。
【キャリア形成支援制度導入コース】
- セルフ・キャリアドック制度
- 教育訓練休暇等制度または教育訓練短時間勤務制度
【職業能力検定制度導入コース】
- 技能検定に合格した従業員に報奨金を支給する制度
- 社内検定制度
【増額】非正規雇用労働者のキャリアアップ事業の実施等:667億円→841億円(+174億円)
平成25年度から始まった、「キャリアアップ助成金」を主体とする事業です。
この助成金キャリアアップ計画数は、初年度の平成25年度:約16,000事業所から、28年度:約47,000事業所へと約3倍に増加し、支給額も増えています。ということで、30年度予算案でも増額の計画となっています。
2016年7月、安倍総理は「同一労働同一賃金を実現し、『非正規』という言葉を、この国から一掃したい」と公の場で語ったと報道されています。
政策的に、この方向性はまだまだ堅持されるとみてよいでしょう。
予算の増額とともに、非正規社員(有期雇用・無期雇用)の正社員化コースは、1事業所(雇用保険適用事業所)につき15人までだった上限人数が20人に引き上げられます。
一方で、正社員化の対象となるのは、「有期契約労働者であった期間が3年以下に限る」ということで、入社4年目以降の社員の正社員化は、助成金の対象外となります。
なお、キャリアップ助成金の、もう1つの大きな柱であった人材育成コース(OJT・OFF-JTの教育訓練)については、他の教育訓練系の助成金とともに「人材開発支援助成金」に統合されるので、そちらを参照してください。
目的 | 概要 |
有期契約労働者、パ-トタイム労働者及び派遣労働者といった非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップ等を促進するため、正社員化、人材育成、処遇改善の取組を実施した事業主に対して助成することにより、労働者の士気・能力の向上等を通じた企業の生産性向上及び優秀な人材の確保や定着の実現を目指す。 | ①正社員化コースにおける支給申請上限人数について、15人から20人に拡充 ※30年4月のいわゆる無期転換ルールの開始に合わせ、正社員化コースの対象労働者について、有期契約労働者であった期間が3年以下に限るなどの見直し ②賃金規定等共通化コースにおいて、対象労働者数に応じた加算措置の創設 |
【新設】人材確保等支援助成金(仮称):0→176億円
「労働生産性向上に資する設備等への投資」、縮めていえば設備投資に対する助成制度が新たに創設されます。
前提として、「生産性の向上や雇用管理の改善に関する計画を作成」することとなっているので、この計画の実行に必要な範囲での設備投資となるのでしょうが、「金融機関と連携」といい、経営力向上計画(中小企業庁)の厚生労働省版のようなことになりそうです。
具体的な要件等が判明すると、なかなか面白そうです。
目的 | 概要 |
建設、介護分野等において顕著となっている人材不足を解消するためには、事業主等による雇用管理改善等の取組みを通じて「魅力ある職場」を創出し、現在就業している従業員の職場定着等を高めることが必要であることから、事業主等の雇用管理改善、生産性向上等の取組みによる助成を通じて、職場定着の促進等を図るもの。 | 職場定着支援助成金、人事評価改善等助成金、建設労働者確保育成助成金を整理・統合 新たに設備改善等支援コース※を創設 ※金融機関と連携しつつ、生産性の向上や雇用管理の改善に関する計画を作成し、省力化のための装置など労働生産性向上に資する設備等への投資を行う企業に対する助成を行う。 |
平成30年度の雇用関係助成金予算とメニュー
本稿を書いているのが2018年1月中旬ですが、平成29年度の制度で助成金を活用しようとするなら、要件の確認や必要書類の整備・作成に数週間は要するので、着手するのかしないのか、最終判断するタイミングです。
何らかの理由で29年度は間に合わない場合や、29年度までに助成金は活用していても新しいメニューの活用余地があるならば、30年度の助成金メニューを知っておいた方がよいでしょう。
毎年11-12月ごろに厚生労働省がまとめる「雇用保険二事業について」という資料に、翌年度の助成金予算案が記載されています。
最新版は、2017年12月8日付「雇用保険二事業について」です。
各種の事業主向け雇用関係助成金の新設、統廃合、増額減額の情報が含まれています。
雇用保険二事業全体の予算規模の推移を見てみると次のとおりで、29年度予算に比べて、30年度予算案では777億円、14.8%の大幅増が計画されています。
- 平成27年度予算:5099億円
- 平成28年度予算:4801億円(▲298億円、▲5.8%)
- 平成29年度予算:5252億円(+451億円、+9.4%)
- 平成30年度予算案:6028億円(+777億円、+14.8%)
まとめ
助成金の受給には、申請前準備から給付まで半年、1年、1年半と時間がかかります。
会社の期では、当期、翌期、翌々期の3期にわたる場合もあるので、中期経営計画の中で「活用は計画的に」!