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西野監督の天秤

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最善の努力?

どんな状況でも、勝利のため、またひとつのゴールのために、最後まで全力を尽してプレーする。

これは、JFAサッカー行動規範の第1項目の規定です。

ベルギー戦は、2-2の同点のまま延長戦にいかずに
「ひとつのゴール」で「勝利のため」コーナーキックを蹴りこんで、
キーパーがキャッチしてから10秒で、逆に相手に勝ち越しゴールを献上してしまいました。

ベルギー戦の日本代表は、行動規範どおりに、「最後まで全力を尽くして」プレーし、
最後の1プレーで力尽き敗れたと言えるでしょう。
行動規範のとおりにプレーしましたが、求めていた結果は得られませんでした。
時代も状況も違いますが、「ドーハの悲劇」を思い出さずにはいられませんでした。

一方、ポーランド戦の日本代表は、、、
0-1で負けていましたが、最後の10分間、
決勝トーナメント進出がかかった「状況」の中、
「ひとつのゴール」をとりにいかず、
その試合の「勝利のため」ではなく、
ある意味では「最後まで全力を尽くして」
リスクをおかさないパス回しをやり遂げ、試合終了を迎えました。

この決断、尋常ではなかったですし、これを徹底するという指示は、
ほとんどすべての指導者のアタマの中で、そもそも選択肢にすら入らなかったでしょう。
行動規範とは真逆のプレーですが、求めていた結果は得られました。
しかし、「フェアプレーポイント」の差を守るために、
フェアプレーとは言い難い戦術を遂行するという矛盾を多くの人が感じたでしょう。

直接対決は引き分けで、勝ち点、得失点差、得点数まで
ぴったり同じになる確率はとても低いものです。
しかし、低い確率でもそのような事態を起こり得るので、
フェアプレーポイントで順位を確定させるという基準が用意されていたわけです。

が、まさかその状況で、
一方のチームが勝ちにいかず、点をとりにいかず、全力で負けを確定させにいき、
他方のチームもそれに合わせるとは、誰も考えていなかったでしょう。

まさに想定外ですが、この想定外の選択、どう評価したらよいのでしょうか?

報道等をみると、「規範にもとる」という視点での批判か、
「結果を出したことは評価すべき」という結果重視の視点での支持か、
大きく賛否が分かれるようです。

リスクマネジメントとして考えると?

ここでは、リスクマネジメントという観点から考えてみたいと思います。
リスクマネジメントの選択肢と優先順位は、一般に、以下のようになります。

1.回避する
2.軽減する
3.転嫁する
4.保有する

0-1で負けていて残り10分という状況で、日本代表が避けたい結末は、
「決勝トーナメントに進出できなくなること」でした。

そうなるのは、

  • 日本がもう1点失点して、得失点差でセネガルに負ける
  • セネガルが1点を挙げて、勝ち点の差でセネガルに負ける
  • 日本もセネガルもスコアはそのままで、日本がレッドカード・イエローカードを受けて、フェアプレーポイントでセネガルに負ける

場合。

そこで日本代表がとったのが「パス回し」戦術というわけです。

これをリスクマネジメントの選択肢にあてはめると、以下のようになります。

1.回避する
マイボールを保持し慎重かつ無難なパス回しを続けることで、
攻撃されて失点するリスクを回避する。

2.軽減する
相手にボールを渡さず、かといって、1点をとりにもいかず、
攻守ともにギリギリのプレーが発生する機会を最小化し、
レッドカード・イエローカードを受けるリスクを減らす。

3.転嫁する
日本はポーランドに負けることを受けいれ、
コロンビアがセネガルに勝つことに期待する。
1・2が自力とすれば、いわば他力本願ですね。

4.保有する
それでも、セネガルがコロンビアから1点を奪う可能性は残ります。
これは、そうなったら仕方がない、と受け入れる。

前提となるリスクアセスメント(評価)は、こうだったのでしょう。

  • A:日本が1点をとりにいって実際にとれる可能性<ポーランドに1点をとられてしまう可能性
  • B:セネガルが1点をあげて引き分けに持ち込む可能性<コロンビアが勝ち切る可能性

これをその場で判断したのか、あらかじめシミュレーションした上で
用意していた選択肢として実行したのかわかりませんが、
リスクマネジメントが成功したと言えるでしょう。

ちなみにベルギー戦は、トーナメント戦なので勝つか負けるか決着をつけるしかない状況ですから

  • 失点するリスクを回避したり軽減するだけでは、負けないかもしれないが勝つこともできない
  • 他チームに結果をゆだねる(転嫁する)こともできない

ので、失点するリスクを保有して1点をとりにいき、結果、
リスクが現実のものになって敗戦しました。

延長戦に持ち込んでいたら、
延長戦で粘りに粘ってPK戦までいければ、
とタラレバの想像をめぐらすこともできますが、、、
どうだったでしょう?神のみぞ知る、です。

来年は?

あなたは、サッカーのワールドカップ、どのようにご覧になりましたか?

ちなみに、2015年のラグビーワールドカップでは、
日本が南アフリカをラストプレーで逆転し勝利する、
という劇的なドラマがありました。

あのとき、3点差で負けている状況で、
選手は、負けるリスクを保有してでも「トライをとって勝つこと」を、
監督は負けるリスクを回避すべく「ペナルティキックを決めて同点で引き分けること」を
考えていました。

スポーツは、それ自体を楽しむだけでなく、
様々な面で企業経営や組織運営の縮図としてよい題材を提供してくれる、
という意味でも「面白い」ですね。

来年はラグビーのワールドカップが日本で開催されます。
どんな「面白い」ことがおきるか、今から楽しみです。

 

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西原 弘

西原 弘

(にしはら ひろし)


経営計画コンサルタント

自分もクライアントも、「自営業という生き方」「経営者という生き方」でよかったと人生をまっとうできる、「会心の経営、会心の人生」を追求しています

略歴
・神奈川県川崎市、小売酒屋の次男に生まれる(1968)
・東京大学文学部卒業(1991)
・株式会社三菱総合研究所研究員(1991-2002)
・有限会社サステイナブル・デザイン研究所設立・代表(2002-)

コンサルティング/コーチングの基本原則
・社内にいない・雇用で確保できない人材の穴を埋めます:社外部長(社外CXO)
・規模によって異なる社長の課題と役割にフォーカスします:ひとり社長経営・脱ひとり社長経営・チーム経営・組織経営
・業種・業態を問わない成功方程式があります:あり方×なり方×やり方×つづけ方=目標達成

心の言葉
・心の欲する所に従って矩を踰えず(孔子)
・不易流行(松尾芭蕉)
・為せば成る(上杉鷹山)
・ピンチはチャンス(福岡正伸)
・感動で決断、論理で実行(西原弘) 

教育・講座(代表例)
・立教大学観光学部兼任講師(環境社会学)(2003-2006)
・島づくり人材養大学講師(2007-)
・ひとり社長大学主宰(2014-)
・2015-16年度第2創業スクール講師(御茶ノ水・虎ノ門・品川・表参道)
・20717年度しまビジネス創業スクール主宰・講師

資格・登録
・技術士(衛生工学部門)
・エコアクション21審査人
・キャッシュフローコーチ
・あしたの給与コンサルタント
・セールスレップ2級
・アンガーマネジメントファシリテーター
・健康経営アドバイザー(初級)

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